「障害者雇用で働きたい。でも履歴書の『障害について』の欄に、何をどう書けばいいのか分からない」——応募の第一歩でつまずく方は、とても多いです。特に 障害をどこまで開示するか・配慮してほしいことをどう伝えるか は、現場でもよくいただくご相談です。
この記事では、障害者雇用の履歴書の基本構成から、障害開示欄・配慮事項欄・志望動機・自己PRの書き方、そして障害種別ごとの例文までを、現役の支援員がやさしく解説します。
筆者は就労移行支援・自立訓練事業所で、日々多くの方の応募書類を一緒に作ってきた現役の支援員です。「これが唯一の正解」という書き方はありませんが、採用担当者に伝わりやすく、入社後のミスマッチを防ぐ書き方のコツなら、現場の視点でお届けできます。
読み終わる頃には、空欄だった「障害について」の欄に、自分の言葉で書き出せるようになっているはずです。
※本記事は 2026年6月時点 の情報です。応募書類の形式は企業ごとに異なる場合があるため、募集要項もあわせてご確認ください。
- 障害者雇用の履歴書は、一般雇用に「障害・配慮事項」の要素が加わる
- 障害開示は「症状だけ」でなく「困りごと→対処法」をセットで書く
- 配慮事項は会社への強要ではなく、相談ベースで具体的に書く
- 例文はあくまで雛形。自分の状況に合わせて書き換える前提
- 開示するか・しないか(オープン/クローズ)には4つの判断軸がある
障害者雇用の履歴書|基本の構成と一般雇用との違い
結論から言うと、履歴書のフォーマット自体は市販のもので問題ありません。一般雇用との違いは、「障害について」「配慮してほしいこと」の欄が加わる点と、志望動機の書き方が少し変わる点です。
基本フォーマットは市販のものでOK
氏名・住所・学歴・職歴・資格といった基本項目は、一般的な履歴書と同じです。JIS規格の様式でも、文具店で売られている市販の様式でも構いません。企業から指定フォーマットが配布された場合は、それに従いましょう。
一般雇用と異なる3つの要素
障害者雇用ならではの要素は、大きく次の3つです。
- 障害について:障害名・等級・診断時期・状態の概要
- 配慮してほしいこと:働くうえで必要なサポート
- 志望動機・自己PR:障害特性と仕事のマッチングを意識した書き方
履歴書に専用欄がない場合は、「本人希望記入欄」や別紙(添え状)を使って伝えるのが一般的です。なお、障害者雇用への応募は 障害者雇用と一般雇用の違い の記事で触れたとおり、障害者手帳の所持が原則条件になります。
履歴書を持って応募の相談に行く際は、ハローワーク障害者窓口が最初の相談先として活用しやすいです。
手書き・PCどちらでもOK
近年はPC作成の履歴書も一般的です。手指の動作に困りごとがある場合などは、無理に手書きにこだわる必要はありません。読みやすさを優先して選んでください。
障害開示欄の書き方(最重要)
もっとも悩むのがこの欄です。ポイントは、「困りごと」と「その対処法」をセットで書くこと。症状を並べるだけでは、採用担当者は「この方と一緒に働けるか」をイメージできません。
書く要素は4つ
基本の要素は「障害名」「等級」「診断(発症)時期」「現在の状態」です。現在の状態は、通院・服薬の有無や、症状が安定しているかどうかを簡潔に添えます。
「症状だけ」を書かない
たとえば「気分の浮き沈みがあります」だけで終えると、不安だけが伝わります。「気分の浮き沈みがありますが、服薬と通院で安定しており、体調管理のため通院日は配慮いただけると助かります」のように、困りごと→対処法・お願いの流れで書くと、前向きな印象になります。
障害名は正式名称+通称で
「自閉スペクトラム症(ASD)」のように、正式名称に通称を添えると、採用担当者に正確に伝わります。等級は「精神障害者保健福祉手帳2級」など、手帳の種別ごとに正しく記載しましょう。
「すべてを正直に細かく書かなければ」と気負う必要はありません。採用担当者が知りたいのは、症状の詳細よりも「どんな配慮があれば力を発揮できるか」です。伝える目的を意識すると、書く内容を絞りやすくなります。
例文集|精神・発達・身体の3タイプ別
ここからは具体的な例文です。例文はあくまで雛形なので、自分の障害名・状態に合わせて必ず書き換えてください。
精神障害(うつ・双極性障害・統合失調症など)の例文
うつ病(精神障害者保健福祉手帳3級)。20XX年に発症し、現在は通院・服薬により症状は安定しています。体調の波はありますが、規則正しい生活で自己管理を続けています。月1回の通院日について、勤務時間の調整にご配慮いただけますと幸いです。
発達障害(ASD・ADHDなど)の例文
自閉スペクトラム症(ASD・精神障害者保健福祉手帳2級)。決められた手順に沿った作業を正確に進めることが得意な一方、複数の指示を同時に受けると混乱しやすい特性があります。指示は一つずつ、できれば文書やメモでいただけると、安定して力を発揮できます。
身体障害(聴覚・視覚・肢体など)の例文
聴覚障害(身体障害者手帳2級)。補聴器を使用しています。口頭での会話は聞き取りづらい場面があるため、重要な連絡はチャットやメモなど文字でのやりとりにご配慮いただけますと助かります。業務内容そのものに支障はありません。
配慮事項欄の書き方
配慮事項は「会社にしてもらって当然のこと」ではなく、「これがあれば長く働けます」という相談として書くのがコツです。なお、事業主による合理的配慮の提供は 障害者雇用促進法で定められた義務 ですが、内容は本人と会社が話し合って決めるものです。
「困りごと → 配慮内容」のセットで書く
(困りごと)疲労がたまると体調を崩しやすい → (お願い)1時間ごとに数分の休憩をいただけると、安定して勤務を続けられます。
過剰要求にならない3つのコツ
- 本当に必要な配慮に絞る(あれもこれもと並べない)
- 「できないこと」より「こうすればできる」を書く
- 会社が対応しやすいよう、具体的な方法まで添える
配慮事項が少ない場合は無理に書かなくてよい
必要な配慮が特にない場合は、「現時点で特別な配慮は必要ありませんが、体調に変化があればご相談させてください」と一文添えれば十分です。空欄を埋めるために無理に書く必要はありません。
配慮事項は「権利だから要求する」という姿勢で書くと、かえって関係づくりが難しくなることがあります。あくまで「お互いが気持ちよく働くための相談」というトーンを意識しましょう。書き方に迷ったら、ハローワークの障害者窓口や就労移行支援などの専門家に相談するのが安心です。
志望動機の書き方|障害者雇用ならではの3要素
志望動機は、一般雇用と同じ「仕事への意欲」に加えて、障害者雇用ならではの視点を1つ足すと説得力が増します。
要素①:仕事への意欲(一般雇用と同じ)
「なぜこの仕事をしたいのか」を、自分の言葉で書きます。ここは一般雇用と変わりません。
要素②:その会社を選んだ理由
事業内容や働き方など、「数ある会社の中でなぜここか」を具体的に書くと、使い回しでない印象になります。
要素③:自分の特性と仕事のマッチング
ここが障害者雇用ならではの要素です。自分の特性が、その仕事のどこで活きるかを書きます。たとえば「集中して正確に取り組むことが得意なので、データ入力業務で力を発揮できると考えています」のように、特性と業務をつなげると、入社後のイメージが伝わります。志望動機と面接の答え方は 障害者雇用の面接対策 もあわせてご覧ください。
自己PRの書き方|強みと特性をつなげる
自己PRでは、強みを具体的なエピソードで語ること、そして特性を「弱み」と「強み」の両面から伝えることが大切です。
強みは具体的なエピソードで
「真面目です」だけでは伝わりません。「前職で在庫管理を担当し、半年間ミスなく続けられました」のように、事実を添えると説得力が出ます。
特性は弱みと強みの両面で語る
多くの特性は、見方を変えれば強みになります。次のNG例・OK例を見比べてみてください。
NG例「人とのコミュニケーションが苦手で、ご迷惑をおかけするかもしれません」とマイナス面だけを書く。
OK例「口頭より文章で考えを整理するのが得意です。報告はメモやチャットを活用し、正確に伝えるよう心がけています」と対処法とセットで書く。
弱みを隠す必要はありませんが、「だからこう工夫している」まで書くと、一緒に働く姿が想像しやすくなります。
支援員視点|開示するか・しないか(オープン/クローズ)の判断軸4つ
障害者雇用は障害を開示して働く「オープン就労」が前提ですが、一般雇用で開示せずに働く「クローズ就労」という選択肢もあります。どちらが良い・悪いではなく、自分の状況に合うほうを選ぶことが大切です。迷ったときの判断軸を4つ紹介します。
判断軸① 症状の安定度
通院や服薬で症状が安定していて、自己管理ができているほど、開示して配慮を受けながら働く選択がしやすくなります。波が大きい時期は、無理のない働き方を優先しましょう。
判断軸② 必要な配慮の量
勤務時間の調整や業務内容の配慮が多く必要なら、はじめから開示して理解を得られるオープン就労のほうが働きやすいことが多いです。
判断軸③ 職場の受け入れ姿勢
障害者雇用の実績が豊富な企業ほど、配慮の体制が整っている傾向があります。応募前に、その会社がどんな受け入れをしているかを確認しておくと安心です。
判断軸④ 本人の「伝えたい度」
最終的には、「自分のことをどこまで知ってもらって働きたいか」という気持ちも大切な判断材料です。正解は人それぞれで構いません。
開示するか迷ったら、一人で抱え込まず専門家に相談してください。応募前の準備は 就労移行支援 でも受けられます。書類添削や模擬面接を通じて、自分に合った伝え方を一緒に整えられます。
まとめ
- 障害者雇用の履歴書は、基本フォーマット+「障害・配慮事項」の要素が加わる
- 障害開示は「症状だけ」でなく「困りごと→対処法」をセットで書く
- 配慮事項は強要ではなく、相談ベースで必要なものに絞って書く
- 志望動機は「自分の特性と仕事のマッチング」を一言添えると伝わる
- 開示するか・しないかは4つの判断軸で、自分に合うほうを選んでよい
履歴書は「自分を売り込む書類」であると同時に、「入社後のミスマッチを防ぐ書類」でもあります。背伸びをしすぎず、ありのままの自分が力を発揮できる働き方を、一緒に見つけていきましょう。
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※本記事は 2026年6月時点 の情報です。応募書類の形式は企業や時期により異なる場合があるため、募集要項もあわせてご確認ください。
※執筆:ふくしのとびら編集部(就労移行支援・自立訓練事業所 現役支援員)