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「就職はできた。でも、ここから続けられるんだろうか」。
働き始めてからのほうが、不安が増える。そう感じる方は少なくありません。
職場の人間関係、増えていく仕事量、体調の波。入社前に決めた配慮が、今の仕事に合わなくなってくることもあります。
そんなときに使えるのが就労定着支援です。就職した後の困りごとを、支援員と一緒に整理していくための障害福祉サービスです。
この記事では、対象になる人、実際に受けられる支援の中身、期間や料金、そしてデメリットまで、現場の様子を交えてお伝えします。
- 就労定着支援は「就職した後」を支える障害福祉サービス
- 対象は就労移行支援などを経て一般就労した方(就職6か月後から)
- 月1回以上の面談と、職場との連絡調整が中心
- 利用できるのは最大3年間(その後はなかぽつへ引き継ぎ)
- 料金は原則1割(非課税・生活保護世帯は0円)
就労定着支援とは?就職した「あと」を支える制度
就労定着支援は、働き続けるための困りごとを、支援員と一緒にほどいていくサービスです。
福祉サービスを使って一般就労した方が対象で、月1回以上の面談を続けながら、職場に定着することを目指します。
就職がゴールではなく、そこからが本番。現場にいると、そう感じる場面が本当に多いです。
「就職してからの伴走者」と覚える
制度の名前は少し硬いですが、中身はシンプルです。
就職した後の伴走者、と覚えておけば十分だと思います。
困ったことを相談する。必要なら会社との間に入ってもらう。生活のことも含めて話せる。
そういう場が、月に1回以上ある。それが就労定着支援です。
障害者総合支援法にもとづくサービス
就労定着支援は、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスのひとつです(第5条第15項)。
2018年度に新しくできた、比較的あたらしい制度です。
事業所が職場や医療機関と連絡調整を行うことは、法律にはっきり書かれています。「相談に乗るだけ」の制度ではありません。
自分は対象になる?
対象になるのは、福祉サービスを利用して一般就労した方です。
具体的には、次のサービスを経て就職した方が当てはまります。
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型・B型
- 生活介護
- 自立訓練
ハローワークや求人サイトから直接就職した場合は、対象外になることがあります。
心配な方は、市区町村の障害福祉窓口で確認してみてください。
なぜ就職6か月後から?その間は誰が支えてくれる?
就労定着支援が始まるのは、就職して6か月が過ぎてからです。
「では、最初の6か月は放っておかれるの?」と思うかもしれません。
そんなことはありません。
最初の6か月は、送り出した事業所が定着支援を担うことになっています。
就労移行支援から就職したなら、その就労移行支援事業所。自立訓練や生活介護からの就職なら、その事業所です。
つまり、就職した直後から支援は途切れません。6か月を過ぎたところで、担い手が就労定着支援に切り替わる。そういう仕組みです。

障害者手帳がなくても使える
障害者手帳は必須ではありません。
市区町村が発行する受給者証があれば利用できます。手帳の取得に踏み切れていない方も、相談の入り口になります。
実際にどんな支援を受けるの?
いちばん多い質問が、これです。
制度の説明を読んでも「で、実際は何をしてくれるの?」がわかりにくいですよね。ここからは、実際にどんな支援をしているかお伝えします。

月1回の面談では何を話す?
面談で話す内容に、決まりはありません。
実際に多いのは、こんな話です。
- 仕事の困りごと
指示があいまいで戸惑う、作業量が増えてきた、同じミスが続いている - 人間関係
雑談の輪に入りづらい、注意のされ方がつらい - 体調のこと
朝起きられない日が増えた、通院の時間が取りにくい - 配慮の見直し
入社時に決めた配慮が、今の仕事内容に合わなくなってきた
「愚痴になってしまいそうで」と遠慮される方もいます。
ですが、その愚痴の中にこそ、調整すべきことが隠れていることが多いです。うまく話せなくても構いません。
困った場面を1つ思い出せれば、そこから一緒にほどいていけますよ。
職場との間に入ってもらう
就労定着支援の中心にあるのが、会社との連絡調整です。法律にも明記されている役割です。
たとえば、こんな場面で使えます。
- 配慮を追加してほしいとき
本人からは言いにくいことを、支援員が言葉を選んで伝える - 会社側が対応に迷っているとき
「どこまで配慮すればいいのか」の相談相手になる - すれ違いが起きたとき
双方の話を聞いて、事実を整理する
支援員は月1回以上、職場を訪問するなどして様子を把握するよう努めることになっています。
第三者が間に入るだけで、こじれずに済む。そういう場面を何度も見てきました。
日常生活の困りごと
面談では、生活リズムや健康状態など、日常生活で困りごとを抱えていないかも確認します。
ほかにも、お金の管理、通院、家族のこと。体調を崩す理由は、職場の外にあることも多いです。
実際に利用されている方からは、「月に一度、自分の状態を整理できる」「職場と家庭以外に相談できる先があって助かる」といった声をいただきます。
いつまで使える?期間と3年後
利用できるのは最大3年間です。
就職から6か月後にスタートするので、実際には就職7か月目から3年6か月目までということになります。
1年ごとの更新・中断や再開もできる
支給決定の期間は1年ごとで、更新しながら最長3年まで使えます。
「しばらく落ち着いたので一度お休みしたい」という中断や、その後の再開も可能です。
3年間ずっと使い切らなければいけない制度ではありません。
3年たったあとは?
3年で終わることに不安を感じる方もいます。
ただ、そこで支援が切れるわけではありません。
希望すれば、障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつ」)などへ引き継ぐことになっています。
引き継ぎを行うことは、事業所が守るべき運営基準にも定められています。
なかぽつには利用期限がないので、今後を支えてくれる相談先となります。
料金はいくら?
自己負担は原則1割です。
ただし世帯の所得に応じて、ひと月の上限額が決まっています。実際には0円で利用している方が多いサービスです。
| 区分 | 月額上限 |
|---|---|
| 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 市町村民税課税世帯(一般1・年収約600万円未満) | 9,300円 |
| 市町村民税課税世帯(一般2・年収約600万円以上) | 37,200円 |
ここでいう「世帯」は、18歳以上の方なら本人と配偶者のみで判断します。
同居している親の収入は含みません。就職して収入が増えた場合は、翌年度から区分が変わることがあります。
就労移行支援と何が違う?
いちばん混同されやすいのが、就労移行支援との違いです。
ひとことで言えば、就労移行支援は「就職するため」、就労定着支援は「働き続けるため」のサービスです。
役割の違い
就労移行支援は、就職前に通って準備をする場所。週3〜5日通うのが中心です。
就労定着支援は、就職した後に月1回以上の面談で関わる支援。通う場所というより、つながり続ける仕組みです。
別々に申請するというより、流れの中で自然に切り替わっていくイメージで大丈夫です。
同じ事業所が両方提供していることが多い
多くの就労移行支援事業所が、就労定着支援もあわせて行っています。
同じ支援員が続けて関わってくれることも多く、就職活動から定着まで一貫して見てもらえるのは大きな安心材料です。
デメリットは?使わない選択もある?
いいことばかり書いても、判断の材料になりません。
正直なところ、こう感じる方もいます。
面談の時間をとるのが負担になることも
月1回とはいえ、仕事のあとや休日に時間を作ることになります。
働き始めたばかりの時期は、それだけで疲れる方もいます。
ただ、面談の頻度や時間帯は相談できます。「最初は短めに」「オンラインで」といった調整をしている方もいます。
職場に支援員が入ることをどう思われる?
「支援員が会社に来ると、特別扱いに見えないだろうか」。
この不安は、よく聞きます。
実際には、職場訪問の頻度も伝え方も調整できます。会社の担当者とだけ話す形にすることもできますし、本人を交えた三者面談にすることもできます。
支援員が入ることを、どこまで・誰に知らせるかは選べます。
それでも使ったほうがいい人・なくてもいい人
私の実感では、次のような方は使う価値が大きいです。
- 困ったことを自分から言うのが苦手な方
間に入ってくれる人がいるだけで、安心材料になります - 体調に波がある方
崩れる前の小さな変化に、一緒に気づける - 職場に相談できる人がまだいない方
職場の外に支えがあることの意味は、思っている以上に大きいです
逆に、職場に相談できる上司がいて、体調も安定していて、必要な配慮も足りている。そういう方なら、無理に使わない選択もあると思います。
それでも私は、「困ってから探す」より「つながっておく」ほうが安全だと考えています。困ってからでは、動く力が残っていないことが多いからです。
合わないと感じたら、途中でお休みすることもできます。まず試してみて大丈夫です。
支援員から見る|定着支援を活かす3つのコツ
ここからは、実際に利用する際に、面談を有意義にするコツを3つお伝えします。
コツ① 「ただ会うだけ」にしない
月1回の面談を、事務的な近況報告で終わらせるのはもったいないです。
事前に「今日話したいこと」を1つだけメモしておく。それだけで面談の中身が変わります。
「この場面で困っている」「この配慮を増やしてほしい」など、小さなことで構いません。
コツ② 職場との橋渡し役として使う
自分から言いにくいことは、「会社に伝えてもらえますか」と頼んでみてください。
面接のときに伝えた配慮事項の追加や調整も、定着支援の場で進められます。
コツ③ 課題が小さいうちに相談する
「これくらい大丈夫」と我慢を重ねた結果、ある日いきなり体調を崩してしまう。
そういう例を、何度も見てきました。
違和感を覚えた段階で相談するのが、長く働くいちばんのコツだと思います。
まとめ
就労定着支援について、現場の様子を交えて解説しました。最後に要点をまとめます。
- 就労定着支援は、福祉サービスを経て就職した方の「働き続ける」を支える制度
- 始まるのは就職6か月後(それまでは送り出した事業所が担当)
- 月1回以上の面談と、職場との連絡調整が中心
- 利用は最大3年間(1年ごとに更新・中断や再開もできる)
- 終了後は「なかぽつ」などへ引き継げる
- 料金は原則1割で、0円で使っている方も多い
就職してからのほうが、迷いは増えます。
そのときに、ひとりで抱えなくていい仕組みがある。それを知っているだけでも、働き方は変わると思います。
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※本記事は2026年7月時点の情報です。制度は改正される可能性があるため、最新の情報は公式サイトでご確認ください。
※執筆:ふく田(就労移行支援・自立訓練事業所 現役支援員)