障害年金を受け取っていても、それだけでは生活費が足りない——。そんな不安を抱えていませんか。
「生活保護も一緒に使えるのか」
「年金をもらっていると保護は受けられないのでは」
お金の制度は分かりにくく、ひとりで悩んでしまいがちです。
結論から言うと、障害年金と生活保護は両方受け取れます。ただし、年金は「収入」として扱われるなど、知っておきたい仕組みがあります。
この記事では、現役の支援員が併給の仕組み・収入認定・障害者加算・申請の順番までまとめて解説します。読み終えるころには、お金の不安を減らす道筋が見えてくるはずです。
- 障害年金と生活保護は併給できる(両方受け取れる)
- 障害年金は「収入」として扱われ、その分 生活保護費は調整される
- 「障害者加算」でトータルの受給額が増えることがある
- 申請は障害年金が先。窓口は年金事務所と福祉事務所
- よくある誤解(年金が止まる・保護が打ち切り)の正しい理解
障害年金と生活保護は「両方もらえる」
はじめに、いちばん知りたい結論からお伝えします。
結論:併給できる(差額を生活保護が補う)
障害年金と生活保護は、同時に受け取ることができます。これを「併給」といいます。
生活保護は、暮らしに必要な「最低生活費」を保障する制度です。障害年金を受け取っていても、それだけで最低生活費に届かなければ、足りない分を生活保護が補います。
なぜ両方もらえるのか
生活保護には「補足性の原理」という考え方があります。まず自分の収入や使える制度を活用し、それでも生活費が足りないときに、不足分を生活保護で補う仕組みです。
障害年金も、この「使える収入」のひとつです。だから年金を受け取りながら、不足する分だけ生活保護を受ける、という形になります。
大切なのは、障害年金が「収入」として扱われるという点です。年金額がそのまま上乗せされるわけではなく、最低生活費との差額が、受け取る生活保護の額になります。仕組みは次の章で説明します。
障害年金は生活保護でどう扱われる?|収入認定の仕組み
では、障害年金は具体的にどう扱われるのでしょうか。ここがいちばん誤解の多いところです。まずは図で見てみましょう。

「収入認定」とは(年金分が差し引かれる)
収入認定とは、障害年金などの収入を生活保護の計算に組み入れることです。最低生活費から、その収入を差し引いた額が、実際に受け取る生活保護の金額になります。
たとえば最低生活費が13万円で、障害年金が月7万円なら、差額のおよそ6万円が生活保護から支給される、というイメージです。
「障害者加算」で上乗せされることがある
ただし、障害のある人には障害者加算がつくことがあります。これは最低生活費に上乗せされる金額です。
障害年金1・2級の方などが対象で、加算がある分だけ受け取れる総額が増えます。つまり、障害年金を申請する意味はしっかりあります。
だから「丸ごと二重取り」ではない
整理すると、障害年金と生活保護は「両方を満額もらえる」わけではありません。年金は収入として差し引かれるからです。
一方で、障害者加算がある分、何も受けないより総額は手厚くなります。「二重取り」でも「もらい損」でもない、と覚えておいてください。
金額の目安|障害者加算でどれくらい変わる?
気になる金額の目安を見ていきます。ただし、実際の額は地域や世帯の状況で変わります。
障害者加算の対象と金額の目安
障害者加算の対象は、障害年金1・2級の受給者や、一定の障害者手帳を持つ方などです。
加算額の目安は、月およそ1万5千円〜2万7千円程度。お住まいの地域区分(級地)によって幅があります。
モデルケースで見る(年金+生活保護のイメージ)
イメージをつかむために、ひとつ例を挙げます(金額は分かりやすくした目安です)。
最低生活費に障害者加算を加えて月15万円、障害年金が月7万円の場合。差額の約8万円が生活保護から支給され、合わせて月15万円ほどの暮らしになります。
なお、障害が重い方は、特別障害者手当など別の手当を受けられることもあります。
金額はあくまで目安です。最低生活費も加算額も、級地・年齢・世帯構成によって変わり、制度改正で見直されることもあります。正確な金額は、お住まいの福祉事務所で最新の情報をご確認ください。
申請の順番と窓口|どちらが先?
「障害年金と生活保護、どちらを先に申請すればいいの?」という疑問にお答えします。流れを図で見てみましょう。

障害年金が先
生活保護は、ほかに使える制度があれば、そちらを先に使うのが原則です。これを「他法他施策優先」といいます。
そのため、障害年金を受けられる可能性がある人は、先に障害年金を申請するよう案内されるのが一般的です。
障害年金の相談・申請の窓口
障害年金の窓口は、初診日に加入していた年金制度によって変わります。どこに相談すべきか迷ったときは、まず年金事務所に相談すれば大丈夫です。相談先には、次の選択肢があります。
- 年金事務所
厚生年金に加入していたときの窓口。迷ったときの最初の相談先にもなります(街角の年金相談センターでも相談できます) - 市区町村の担当窓口
初診日が国民年金(自営業・学生など)の方の申請窓口 - 社会保険労務士
書類が複雑で、手続きを専門家に任せたいとき
初診日の証明や診断書など、準備に時間がかかることもあります。制度の基本は障害年金の記事で解説しています。
生活保護の窓口(福祉事務所)
生活保護の相談・申請は、お住まいの福祉事務所(市区町村役場の福祉課など)です。収入や資産の状況を確認したうえで、保護が必要かどうかが判断されます。
生活保護を受けている間は、医療費が原則かからない「医療扶助」も受けられます。
よくある誤解と注意点
最後に、よく聞かれる疑問を Q&A 形式で整理します。
Q. 生活保護を受けると、障害年金は止まりますか?
いいえ、止まりません。生活保護と障害年金は別の制度です。むしろ、障害年金を受けられる人は申請をすすめられます。
Q. 障害年金をもらうと、生活保護は打ち切りになりますか?
それだけで打ち切りにはなりません。年金額が最低生活費を上回れば保護は不要になりますが、下回るあいだは差額を受け取れます。
Q. 障害年金などの収入は、申告が必要ですか?
はい、必ず申告します。障害年金などの収入は、福祉事務所に申告してください。申告しないと、あとで返還を求められることがあります。さかのぼって年金が支給されたときも同じです。正直に伝えることが、いちばん安心です。
制度は、組み合わせて使っていいんです。「年金があるから生活保護は申請しづらい」と我慢する必要はありません。足りないときは、遠慮なく福祉事務所に相談してください。
支援員視点|お金の不安をひとりで抱えない
お金のことは、人に相談しづらいテーマです。最後に、支援員としてお伝えしたいことがあります。
使える制度は遠慮なく使う
公的な制度は、必要な人が使うためにあります。障害年金も生活保護も、暮らしを守るための仕組みです。
「申請するのは申し訳ない」と感じる方もいますが、その必要はありません。使えるものを使うのは、当然の権利です。
ひとりで抱えない
制度の手続きは、ひとりで全部やろうとしなくて大丈夫です。生活保護は福祉事務所、障害年金は年金事務所が窓口になります。
手続きが難しいときは、社会保険労務士や基幹相談支援センターも頼れます。障害者手帳があると障害者加算につながることもあるので、あわせて確認しておきましょう。
お金の不安は、抱えこむほど大きくなります。まずは福祉事務所や年金事務所に相談してみてください。一緒に考えてくれる人が、きっといます。
相談先がほかにも知りたいときは、目的別の窓口をまとめた障害の相談はどこにすればいい?目的別の窓口を支援員が解説もご覧ください。
まとめ
障害年金と生活保護の関係を、支援員の視点でまとめました。最後に要点を振り返ります。
- 障害年金と生活保護は併給できる(足りない分を保護が補う)
- 障害年金は収入認定され、その分 生活保護費は調整される
- 障害者加算がある分、総額は手厚くなる(申請する意味はある)
- 申請は障害年金が先。窓口は年金事務所と福祉事務所
- 年金などの収入は必ず申告。迷ったら福祉事務所へ相談を
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※本記事は 2026年6月時点 の情報です。制度は改正される可能性があるため、最新の情報や正確な金額は、お住まいの福祉事務所・年金事務所など公式の窓口でご確認ください。金額・加算額は目安であり、級地や世帯状況により異なります。
※執筆:ふくしのとびら編集部(就労移行支援・自立訓練事業所 現役支援員)