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「うちの子は将来、自立して暮らしていけるのだろうか」
「もし自分たちが先に亡くなったら、この子はどうなるんだろう」
発達障害のお子さんを育てる親なら、誰しも一度はこうした問いと向き合った経験があるのではないでしょうか。
眠れない夜にふと頭をよぎる重い気持ち。
それを話せる相手がいないまま、ひとりで抱え込んでしまっている方も少なくありません。
この記事では、お子さんの将来を考えるときに押さえたい 3つの視点・進路の選択肢・「親なきあと」の備え方・親としての姿勢 を、できるだけやさしく整理してお伝えします。
筆者は就労移行支援・自立訓練事業所で日々多くの当事者の方やご家族の相談を受けている現役支援員です。
「不安を一切なくす方法」はお伝えできませんが、「漠然とした不安を、行動できる不安に変える」ためのヒントなら、現場の視点でお届けできます。
読み終わる頃には、 今からできる具体的な一歩 が見えてきて、少しでも心が軽くなれば嬉しいです。
※本記事は 2026年5月時点 の情報です。制度や運用は改正される可能性があるため、最新情報は厚生労働省や自治体公式サイトもあわせてご確認ください。
- 「不安を抱くこと」自体は自然で、抱え込まないことが何より大事
- 将来を考えるときの3つの視点(生活・経済・人間関係)
- 進路と就労の選択肢は以前より広がっている
- 「親なきあと」に今からできる3つの準備
- 支援員から見る「不安と上手に付き合えている親」に共通する3つの姿勢
「うちの子の将来が不安」その気持ちは、自然なものです
発達障害のお子さんを育てる親が抱える不安は、大きく3つに分けられます。
① お子さん自身の自立への不安
「ひとりで生活していけるのか」「身の回りのことは自分でできるようになるのか」。
日々の暮らしの中で、繰り返し顔を出す不安です。
年齢が上がっても、不安の形を変えながら付き合うことになります。
② 経済面の不安
「働いて収入を得られるのか」「働けなかった場合の生活費はどうするのか」。
将来のお金については、想像するほど心配が膨らみます。
収入は「全部を自分で稼ぐ」必要はないのですが、その情報は意外と知られていません。
③ 「親なきあと」の不安
最も深く、口にしづらい不安かもしれません。
「自分たちが先に亡くなったら、この子の生活は誰が支えるのか」という問いに、明確な答えがすぐに見つからない方が多いです。
不安を感じることは、弱さではない
これらの不安を抱えていること自体は、 お子さんを真剣に思っているからこそ生まれる気持ち です。
決して親としての弱さではありません。
むしろ、不安を感じているからこそ、早めに準備に動ける、ともいえます。
不安は 「悪いもの」ではなく「合図」 です。
「そろそろ動いた方がいいかも」というサインとして受け取れると、不安と上手に付き合いやすくなります。
不安を感じる気持ちは、ご家族として自然なものです。
むしろ、お子さんの将来を真剣に考えているからこそ出てくる感情です。
「今からできることをひとつずつやっていけば大丈夫」と、ご自身にも声をかけてあげてください。
将来を考えるときに押さえたい3つの視点

将来の不安を「漠然」から「具体的」に変えるには、視点を整理することが第一歩です。
次の3つの軸で考えてみてください。
① 生活面(住まい・身辺自立)
どこで誰と暮らすか、身辺の自立はどこまで目指すか。お子さんの特性によって、目指す形は人それぞれです。
完全な一人暮らし、グループホーム、家族との同居、ヘルパー支援を受けながらの暮らしなど、 選択肢は複数あります。
「自立」を一つの形に限定しないことが、選択肢を広げます。
② 経済面(収入・福祉サービス)
働いて得る収入だけでなく、 障害年金・各種手当・福祉サービス など、複数の仕組みを組み合わせて生活を支える方法があります。
経済面は一つの選択肢で抱え込まず、「組み合わせる」という発想で考えてみてください。
③ 人間関係(支援者ネットワーク)
意外と見落とされがちですが、 支援者ネットワーク がお子さんの将来を大きく左右します。
家族以外で気にかけてくれる人、相談できる窓口、福祉サービスのスタッフ。
早めにつくっておくと、いずれ親が動けなくなった時の支えになります。
学齢期の「勉強の悩み」から将来不安を感じている方へ
「うちの子、勉強が苦手で」「将来やっていけるんだろうか」——学齢期の親御さんから本当によく聞く悩みです。
結論からお伝えすると、学校での成績の良し悪しが、将来のすべてを決めるわけではありません。
発達障害のお子さんが大人になってから生きやすくなるかどうかは、もっと別のものに左右されることが多いです。
「合う環境で学ぶ」が一番大事
通常学級でクラスのペースに合わせるのが辛い、宿題が極端に進まない、というのは「お子さんが悪い」のではなく「環境が合っていない」サインのことが多いです。
通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校など、合う場所で学ぶことで、本人の力は驚くほど伸びます。
大人になって効くのは「成績」より「自分を知る力」
現場で見ていると、就労に困らずに進んでいく方は、必ずしも学校の成績が良かった人ではありません。
「自分が何が苦手で、どんな配慮があれば力を発揮できるか」を自分の言葉で伝えられる方が、企業の中でも続けやすいです。
学齢期は、テストの点数より「自分を知る経験」を積む時期と考えてもいいかもしれません。
勉強の悩みは、いま目の前にある悩みであって、将来そのまま続くわけではありません。
学齢期の進路選びを一緒に考えてくれる専門家(スクールカウンセラー・教育相談・発達相談・通級の先生)に、ぜひ早めにつながってください。
進路と就労の選択肢を知っておく
不安が大きくなる理由のひとつは、 「選択肢を知らない」 ことにあります。
合理的配慮の制度化などで、進路の選択肢は確実に広がっています。
進路(学齢期〜青年期)
進路の選択肢は、思っているより広いです。
- 特別支援学校・特別支援学級
- 通信制高校・サポート校
- 専門学校・大学(合理的配慮を提供する学校が増加中)
- 高校卒業後の就労準備(就労移行支援・自立訓練など)
就労(成人後)
- 一般雇用(クローズ就労・オープン就労)
- 障害者雇用
- 就労継続支援A型(雇用契約あり)
- 就労継続支援B型(雇用契約なし)
- 就労移行支援(一般就職を目指す訓練)
早い段階から関わり方を整えておくことが、その後の選択肢を広げます。
選択肢を「知る」だけで不安は小さくなる
すべての選択肢を今すぐ決める必要はありません。
「こういう道もある」と知っておくだけで 、目の前の不安はずいぶん小さくなります。
お子さんが選ぶ道は将来変わるかもしれませんが、選択肢を持っていることが、何よりの安心材料になります。
「親なきあと」に向けて今からできる3つの準備

最も重い不安「親なきあと」ですが、 できる準備は確実にあります。
完璧を目指す必要はなく、3つの方向に少しずつ進めれば十分です。
① 公的制度を整える
将来お子さんの暮らしを支える土台は、公的制度です。早めに整えておくと安心の根がしっかりします。
- 障害者手帳
福祉サービスや税控除の根拠になる - 障害年金
成人後の経済基盤として大きい - 成年後見制度
判断能力に支援が必要な場合の備え - 障害福祉サービス受給者証
障害福祉サービスを利用するときに必要な証明書
「使う日が来てから」ではなく、 使えるかどうかだけでも早めに確認 しておくことが大切です。
② 経済的な備え
お子さんの将来の生活費を、ご家族が亡くなった後も支える仕組みづくりです。
- 生命保険信託・特定贈与信託
- 遺言書の作成
- お子さん名義の貯蓄や非課税枠の活用
この領域は専門性が高いため、 FP(ファイナンシャルプランナー)や弁護士など、障害のあるお子さんの支援に詳しい専門家 に相談するのが現実的です。
「親なきあと」をテーマに扱う専門家が増えてきています。
③ 支援者ネットワークを広げる
制度やお金が整っても、 「実際に動いてくれる人」 がいないと支援は届きません。
日頃から複数の相談先とつながっておきましょう。
- 自治体の障害福祉窓口
- 相談支援事業所(サービス等利用計画を作る場所)
- 親の会・当事者会
- かかりつけ医・主治医
- 就労支援事業所
複数の相談先を確保しておくことで、いざという時に「誰に頼ればいいかわからない」状況を避けられます。
相続・信託・成年後見など個別の判断が必要な領域は、必ず 専門家(弁護士・司法書士・FP・社会福祉士など) にご相談ください。
この記事は概要の整理にとどまります。
「親なきあと」の準備は、一気にやろうとすると重すぎます。
今年は信託の話を専門家に聞く、来年は成年後見を調べる、のように1年にひとつずつでも前進すれば十分です。
完璧な準備でなくても、お子さんの周りに支援者の輪があれば、何とかなるものです。
支援員から見る|不安と上手に付き合えている親に共通する3つの姿勢
最後に、現場で多くのご家族と関わるなかで見えてきた、 不安と上手に付き合えている親に共通する姿勢 を3つお伝えします。
① 一人で抱え込まない
配偶者、親の会、支援者、専門家。誰でもいいので、 定期的に話せる相手をつくっています。
「親が孤立しない」ことが、結果的にお子さんの将来も支えます。
話す相手は身近な家族でも、地域の親の会でもオンラインの当事者会でも構いません。
専門家と一緒に「関わり方」を整える場として、ペアレントトレーニングも選択肢の一つです。
② お子さんの「できる」を信じすぎず、過小評価もしない
「うちの子には無理」と決めつけず、かといって「これくらいできるはず」と高すぎる期待もしない。
お子さんの今の力を正確に見ている親 ほど、選択肢を冷静に検討できる印象があります。
第三者(支援者・教師など)の見立ても取り入れると、親の主観に偏らずに済みます。
③ 早めに動く
高校卒業を控えてから慌てて福祉制度を調べる方より、 数年前から少しずつ情報を集めている親 の方が、結果的に選択肢を多く持てています。
「動く」といっても大層なことではなく、相談窓口に一度行ってみる、本を1冊読んでみる、その程度で十分です。
完璧な親である必要はありません。
「親が幸せに過ごせていること」自体が、お子さんへの大きな支え になります。
ご自身を労る時間も、将来への大事な準備の一つです。
まとめ
発達障害のお子さんの将来への不安は、 真剣にお子さんを思っているからこそ生まれるもの です。
決して弱さではありません。
一方で、その不安を「漠然」のまま抱え続けるのは、親自身にとっても大きな負担になります。
- 不安は自然なもの。一人で抱え込まないことが何より大事
- 「生活」「経済」「人間関係」の3つの視点で整理してみる
- 進路と就労の選択肢は以前より広がっている
- 「親なきあと」には3つの準備(公的制度・経済・ネットワーク)で備えられる
- 早めに動いている親ほど、結果的に選択肢が増える
完璧な準備はできなくても、 今日できる一歩を踏み出す ことなら可能です。
お住まいの地域の障害福祉窓口や相談支援事業所への一本の電話から、未来は少しずつ変わっていきます。
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※本記事は2026年5月時点の情報です。制度や運用は改正される可能性があるため、最新情報は厚生労働省や自治体公式サイトでご確認ください。個別の判断(相続・成年後見・保険など)は必ず専門家にご相談ください。
※執筆:ふくしのとびら編集部(就労移行支援・自立訓練事業所 現役支援員)