「自分が亡くなったあと、お子さんはどこで暮らすのだろう」「成人したわが子も同居が当たり前でいいのか」。障害のあるお子さんを育ててきたご家族から、現場で繰り返しいただくご相談です。
そんなときに選択肢のひとつになるのが、グループホーム(共同生活援助)です。少人数の共同生活で、夜間〜朝の暮らしをスタッフが支えてくれる住まいの仕組みで、親なきあとの暮らしを準備する大切な選択肢のひとつになります。
ただし、「希望してすぐ入れる制度ではない」「ホームによって雰囲気がまったく違う」「合うかどうかは数値ではなく体感で決まる」など、制度の理解だけでは決められない部分も多くあります。この記事では、グループホームの基本・3つの種類・費用感・入居までの流れに加えて、現役の支援員が現場で大事にしている「選び方の判断軸」までやさしく解説します。
- グループホーム(共同生活援助)は障害がある方が少人数で共同生活する住まい
- 3つの種類:介護サービス包括型・外部サービス利用型・日中サービス支援型
- 費用は家賃+食費+利用料1割、家賃補助(月1万円)あり
- 入居までは情報収集・体験利用・契約で2〜数か月、空き待ちが長いことも
- 選び方は「数字より体感」、複数ホームの体験利用が必須
グループホーム(共同生活援助)とは?基本を押さえる
制度の目的
グループホーム(正式名称:共同生活援助)は、障害のある方が少人数で共同生活を送りながら、日常生活の支援を受けられる住まいの仕組みです。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつで、地域の中で自立した暮らしを送ることを目的にしています。
主な対象者
原則18歳以上の障害がある方が対象です。身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・難病など、障害種別を問いません。障害者手帳の有無も問いませんが、市区町村が発行する受給者証が必要になります。
何をしてくれる場?
1つのホーム(一軒家やアパートを利用することが多い)に2〜10名程度が共同生活し、世話人や生活支援員が日常生活を支えてくれます。支援の中心は朝・夜・週末の時間帯で、食事の準備・服薬の確認・金銭管理のサポート・相談対応などが行われます。日中は仕事や就労継続支援などに通うのが一般的です。
3つの種類と違い
グループホームは支援内容と利用者層で3つの類型に分かれます。まずは早見表で違いを確認しましょう。
| 類型 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 介護サービス包括型 | 軽度〜中度の障害がある方 | 介護を含めホームの職員が一体的に提供。最も一般的な類型 |
| 外部サービス利用型 | 自立度が比較的高い方 | ホームは生活支援のみ、介護は外部事業者を利用 |
| 日中サービス支援型 | 重度の障害・高齢化した方 | 24時間体制で日中も支援。重度向け |
介護サービス包括型|中心的な類型
最も普及している類型で、世話人・生活支援員に加え、必要な介護もホームの職員が提供します。「グループホーム」と聞いてイメージされる中心的な形です。生活支援+食事提供+必要な介護がワンセットで提供されます。
外部サービス利用型|自由度高め
ホームでは日常生活の相談や見守りを中心に行い、介護が必要なときは外部の居宅介護事業者(ヘルパー)を利用する形です。「自分の生活スタイルに合わせてサービスを組み合わせたい」「自立度が比較的高い」という方に向いています。
日中サービス支援型|重度・高齢化向け(24時間支援)
重度の障害がある方や高齢化により日中も支援が必要な方を主な対象に、24時間体制で支援を提供する類型です。日中は他のサービスに通えない方の受け皿になります。
「どの類型がいいか分からない」場合、まずは介護サービス包括型から検討するのが現実的です。事業所数も多く、見学・体験の選択肢が広がります。
費用感|家賃・食費・利用料の目安
月々かかる費用は大きく3つに分かれます。
家賃と特定障害者特別給付費(家賃補助・月1万円)
家賃はホームによって幅があり、月3万円〜10万円程度が目安です。生活保護世帯と市町村民税非課税世帯の方には、特定障害者特別給付費(月1万円)という家賃補助があります。
食費・光熱費・日用品費(自己負担)
食費・光熱費・日用品代は自己負担です。ホームによって金額がかなり違いますが、合計で月3〜5万円程度になることが多いです。
サービス利用料(1割負担・月額上限あり)
障害福祉サービスとしての利用料は1割負担で、世帯所得に応じて月額上限が設定されています(生活保護・非課税世帯は0円、一般1は9,300円、一般2は37,200円)。障害年金や特別障害者手当と組み合わせて家計設計を考える方が多いです。
月額のおおよその目安
家賃補助あり・標準的なホームの場合、月8〜12万円程度(家賃+食費・光熱費+利用料)が目安になります。ホームによって差が大きいので、必ず複数の事業所で確認してください。
家賃水準は立地・部屋の広さ・新築/中古でかなり変動します。「月額○円」と一律で示せるものではないので、見学時に明細を確認するのが大事です。
入居までの流れ(5ステップ)
申込みから入居まで、おおよそ以下の5ステップで進みます。
① 情報収集・候補ホームの絞り込み
自治体の障害福祉課・相談支援事業所・基幹相談支援センターから、地域のグループホーム情報を集めます。WAM NETなどの事業所検索サイトも活用できます。
② 見学・体験利用
候補ホームを実際に見学し、可能なら1〜数泊の体験利用を行います。ここが最も大事なステップです(後述)。
③ サービス等利用計画の作成
相談支援事業所と一緒に、グループホーム利用を含むサービス利用計画を作成します。
④ 受給者証の発行・入居契約
自治体に申請して受給者証が交付されたら、ホームと利用契約を結びます。
⑤ 入居開始
契約に基づいて入居がスタートします。最初は週末だけなど、段階的に増やしていく方もいます。
支援員視点|選び方の判断軸
グループホーム選びは、パンフレットやネットの情報だけでは決めきれない部分が多くあります。現場で大事にしている判断軸を5つご紹介します。
軸① 障害特性とホームの雰囲気の相性(最優先)
同じ「介護サービス包括型」でも、ホームによって雰囲気がまったく違います。にぎやかな共有スペースが好きな方もいれば、静かに過ごしたい方もいます。ご本人がリラックスして過ごせそうかを、見学時の空気感で感じ取ることが何より大事です。
軸② 体験利用は複数ホームで必ず行う
1か所だけ見て決めないでください。可能なら3か所以上で体験利用してから決めるのが理想です。「合わなければ次へ」という気持ちでOKです。体験利用は無料または低額で受け入れているホームが多くあります。
軸③ 立地(日中活動・通勤・実家からの距離)
日中に通う先(就労移行支援事業所・就労継続支援・職場など)からの通いやすさは見落とされがちです。ご家族の家からの距離も、緊急時の対応を考えると重要です。
軸④ 重度・高齢化を見据えた類型選び
「今は包括型で十分」でも、将来重度化や高齢化が見込まれる場合、移行のしやすさを考えておく必要があります。日中サービス支援型がある法人を選んでおく、という視点もあります。
軸⑤ 一人暮らしへのステップとしての位置づけ
2024年4月の制度改正で、グループホームから一人暮らしへの移行を支援する役割が明確化されました。「ずっと住み続ける」だけでなく、「自立生活への通過点」として活用する選択肢もあることを覚えておいてください。
一人暮らしに移行したあとも、居宅介護(ホームヘルパー)などの訪問サービスを使えば、自宅での生活を支えてもらえます。
数字や条件比較も大事ですが、最後の決め手は「ご本人がここで暮らしたいと思えるか」です。「設備が新しい」「家賃が安い」ではなく、「居心地のよさ」を優先してください。
いつから動き出すか|親なきあとを見据えて
「空き待ち」が長いことが多い
人気のホームは空きがなかなか出ません。地域によっては1〜2年待ちになることもあります。「希望してすぐ入居」は現実的ではありません。
体験利用は早めに繰り返し経験
「将来のために」と考えたら、20代でも体験利用を始めて損はありません。ご本人にとっても「家以外でも過ごせる」経験を積むことが、入居時のハードルを下げます。
成年後見制度との組み合わせ
親が亡くなった後の財産管理・契約代行を考えると、成年後見制度との組み合わせを早めに検討しておくと安心です。グループホームの入居契約や費用支払いを後見人がサポートするケースもあります。
親が動けるうちに準備しておくと安心
親御さんが元気なうちに、お子さんと一緒に見学・体験利用を重ねておく、相談支援事業所とのつながりを作っておく、ということが、いざという時の安心につながります。
「明日からすぐ入居」が難しい制度です。余裕のあるうちから情報収集と体験を始めるのが結果的に選択肢を広げます。
グループホームを含む親なきあとの住まい・お金・支える人の準備は、障害のある子の「親なきあと」準備もご覧ください。
まとめ
障害者グループホームについて、現場の感覚を交えて解説しました。最後に要点をおさらいします。
- グループホーム(共同生活援助)は障害がある方が少人数で共同生活する住まい
- 3類型:介護サービス包括型・外部サービス利用型・日中サービス支援型
- 月額の目安は家賃補助込みで8〜12万円程度(ホームで差が大きい)
- 選び方は「数字より体感」、複数ホームの体験利用が必須
- 「空き待ち」が長いので、親なきあとを見据えるなら早めの動き出しが安心
グループホームは、ご本人の暮らしを大きく左右する選択です。一人で抱え込まず、相談支援事業所・基幹相談支援センター・自治体障害福祉課に相談しながら進めてください。制度詳細は厚生労働省「障害福祉サービスの内容」もあわせてご確認ください。
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※本記事は2026年5月時点の情報です。制度は改正される可能性があるため、最新の情報は公式サイトでご確認ください。
※執筆:ふくしのとびら編集部(就労移行支援・自立訓練事業所 現役支援員)