自分がいなくなったあと、この子はどうやって生きていくのだろう——。障害のある子を育てていると、一度は胸をよぎる不安だと思います。
その不安は、ゼロにはできなくても、準備で小さくすることはできます。この記事では、親なきあとに向けて「今からできること」を、お金・住まい・支える人の3つに分けて整理します。
筆者は、福祉の現場で働く支援員です。親なきあとの備えは、制度も相談先も入り組んでいます。何から考えればいいのかを、この記事で一緒に整理していきましょう。
読み終わるころには、漠然としていた不安が「やることリスト」に変わり、最初の一歩が見えているはずです。
- 「親なきあと」の不安を、お金・住まい・支える人に分けて整理
- 本人が暮らし続けるための体制(年金・グループホーム・後見など)
- 親が元気な今のうちにしておく備え(情報の引き継ぎ・遺言など)
- きょうだいに負担を背負わせないための考え方
- まず何から始めればいいかのステップ
「親なきあと」の不安は、準備で小さくできる
「親なきあと」とは、親が亡くなったり、年齢や病気で子を支えられなくなったあとのことです。漠然とした不安を抱えている方も多いと思います。
不安の正体を、分けて整理する
不安が大きく感じるのは、いろいろな心配が一緒くたになっているからかもしれません。まずは分けて考えてみましょう。
大きく分けると、心配は「お金」「住まい」「支える人」の3つ。そして、きょうだいへの負担です。一つずつ見ていけば、できることが見えてきます。
親が元気な“今”が、準備のはじめどき
準備は、親が元気なうちに少しずつ進めるのがいちばんです。親が動けるうちに整えておくことで、本人もまわりも慌てずにすみます。
とはいえ、焦る必要はありません。一度に全部やろうとせず、できることから始めれば大丈夫です。
完璧に準備しようとすると、かえって手が止まってしまいます。全部いっぺんにやらなくて大丈夫。今日ひとつ、本人のことをメモするだけでも、立派な第一歩なんです。
本人が暮らし続ける体制をつくる
まずは、本人が安心して暮らし続けるための土台です。「お金・住まい・支える人」の3本柱で考えます。

お金:障害年金・手当・生活保護
本人の収入の柱になるのが、障害年金です(障害年金とは?)。重い障害があれば特別障害者手当が加わることもあります。
それでも生活費が足りないときは、生活保護と組み合わせる方法もあります。お金は「いくら入ってくるか」を早めに見積もっておくと安心です。
住まい:グループホームなどの選択肢
親と離れて暮らす場所として、グループホームや施設という選択肢があります(グループホームとは?)。
人気の住まいは、申し込んですぐ入れるとは限りません。「いずれ」ではなく、早めに見学や相談をしておくと、いざというとき動きやすくなります。
支える人:成年後見・相談支援
判断やお金の管理に支援が必要な場合、成年後見制度で本人を法的に支える人を決められます。
日々の相談は、相談支援専門員や基幹相談支援センターが担ってくれます。「親以外に、本人を気にかける人」を増やしておくことが、何よりの備えです。
親が“今”しておく備え
本人の体制と並んで大切なのが、親側の準備です。親しか知らない情報を、きちんと引き継げる形にしておきましょう。
本人の情報を引き継ぐ(サポートブック)
本人の特性、好き嫌い、薬、かかりつけ医、困ったときの対応——。これらは親が自然に把握していることが多く、いなくなると分からなくなりがちです。
「サポートブック」や支援ファイルとして書き残しておくと、引き継ぐ人が助かります。少しずつ書き足していけば十分です。
お金とモノを整理する
預貯金や保険、不動産がどこにあるか。本人にどう遺すか。遺言やエンディングノートに整理しておくと、のちのトラブルを防げます。
障害のある子に確実にお金を遺す方法には、専門的な選択肢もあります。下の注意書きにある専門家に相談すると安心です。
キーパーソンと相談先を決めておく
「自分にもしものことがあったら、まずここに連絡を」という先を決めておきましょう。親族でも、支援機関でもかまいません。
連絡先や本人の情報を、家族や支援者とあらかじめ共有しておくことが大切です。
相続・遺言・成年後見・信託(障害のある子にお金を遺す仕組み)などは、専門的な判断が必要です。司法書士・社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーや、「親なきあと相談室」などの専門窓口に相談しましょう。
きょうだいに背負わせないために
「親なきあと、きょうだいに迷惑をかけたくない」。これも、よく聞く切実な願いです。
きょうだいの役割を「決めつけない」
きょうだいが本人を支えるのは、自然な形のひとつです。でも「面倒を見るのが当然」と決めつけると、きょうだい自身の人生が重くなります。
支えるかどうか、どこまで関わるかは、きょうだい自身が選べるようにしておきたいところです。
第三者に頼る前提で考える
きょうだいに背負わせないためには、後見人や支援機関など、家族以外の支えを前提に組み立てることが大切です。
「親 → きょうだい」と引き継ぐのではなく、「親 → 社会の仕組み」へ。そう考えると、きょうだいの負担はぐっと軽くなります。
まず何から?親なきあと準備のステップ
最後に、何から手をつければいいかの順番です。難しく考えず、この流れで十分です。

① 本人のことを書き出す
まずは、本人の特性・体調・好み・かかりつけ医などを書き出すことから。サポートブックの第一歩です。
② 使える制度・お金を確認する
次に、障害年金や手当など、本人が使える制度とお金を確認します。分からなければ、市区町村の窓口で聞けば教えてもらえます。
③ 相談先につながる
そして、相談先を持つこと。基幹相談支援センターや「親なきあと相談室」、相談支援事業所などが力になってくれます。どこに相談すればいいか分からないときは、相談窓口のまとめも参考にしてください。
親なきあとの準備は、ひとりで抱えるものではありません。専門家や支援機関と一緒に、少しずつ進めていけば大丈夫。あなたが元気なうちに動き出せたこと自体が、もう大きな一歩です。
まとめ
「親なきあと」の不安は、簡単には消えません。でも、お金・住まい・支える人を整理し、親側の備えをしておくことで、確実に小さくできます。何より、本人を支える人を家族の外にも増やしておくことが大切です。
- 不安は「お金・住まい・支える人・きょうだい」に分けて整理する
- 本人の体制:障害年金・グループホーム・成年後見などを早めに確認
- 親側の備え:サポートブック・遺言・キーパーソンを今のうちに
- きょうだいに背負わせず、第三者・制度に頼る前提で考える
- まずは本人のことを書き出し、制度を確認し、相談先につながる
発達障害のお子さんの将来全般については、発達障害の子の将来が不安なときでも書いています。今日のひとつの行動が、未来の安心につながります。
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※本記事は 2026年6月時点 の一般的な情報です。相続・成年後見・各種制度の手続きや判断は、お住まいの自治体や司法書士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
※執筆:ふくしのとびら編集部(就労移行支援・自立訓練事業所 現役支援員)